新たな春に向けて/10年前の某紙投稿原稿より①
とき | 2021年1月20日(水) |
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新たな春に向けて
月日の経つのは早いものだ。雪解けの清水にフキノトウを見つけ、石鎚山にもいよいよ春到来か!と思う間もなく新緑萌える初夏を迎え、霊峰に鈴の音、法螺貝の音が木霊す夏山開き。全山白装束に染まった10日間も過ぎると夏休みともなり、涼を求めて家族連れを始め多くの人々が西日本最高峰を目指す。正に石鎚山の「動」なる時だ。
9月、石鎚を清らかな冷気が包み、10月に入ると、その山頂のナナカマドから紅葉が始まり、次第に赤や黄色のベールが山麓へと下りて行く。前社ヶ森を登り夜明かし峠付近に辿り着くと、一気に天狗岳と弥山(みせん)の展望が開け・・・思わずその麗しさに息を呑む。錦秋の時だ!
空はどこまでも高く青く、下界に目を向けると瀬戸内海に島々が気持ち良さそうに浮かんでいる。
11月も下旬になると、早い年では、紅葉の先陣をきったナナカマドも薄氷を纏い、緑から赤、そして白へとその姿を変えて行く。
・・・季節は移ろい12月。訪れる人も少なくなり、山頂は氷点下の朝夕を迎え、ナナカマドも「静」なる時にその身を置いている。
こんな光景を、暫しの眠りに就くとよくいうが、雪が積み、凍て付く山頂の限られた大地の下では、もう既に新たな春に向かって、草木それぞれの命の営みが始まっているのである。
文責 事務局長 曽我部英司
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