石鎚古道をゆく(6)

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とき 2019年10月29日(火)

石鎚古道をゆく(6)

・・・お山開き・・・

今回は、ご存知の石鎚山最大のお祭「お山開き」の今昔を少し。現在このお祭は、7月1日から10日間、普段は石鎚神社本社(西条市西田鎮座)にお祀りする三体の御神像が、霊峰石鎚山頂にお祀りされて執行されています。

古くは、期間や開催月にも変遷があったようですが、俗に「お山市」ともいわれるように、かつて登山道沿いには文字通り「市」が立ち、ニッケ(シナモン)やお茶などのお山土産も売られました。7合目の成就に近い今宮や黒川集落の季節宿(臨時の民宿)は、連日満員。ちなみに、登山ロープウェイが架設された昭和43年(お山開き終了後の8月に運行開始)の今宮集落にある季節宿の宿泊料金は、一泊二食付で850円でした。

時は流れ、登山ロープウェイの架設や自動車道の開通、また瀬戸大橋も架設された昨今、四国圏内はもちろん瀬戸内海沿岸地域からの日帰り登山も可能となり、隔世の感一入です。

さて、7月1日。前日に御輿に乗って成就社まで登られた御神像は、ここからは信者さんの背に乗って一気に山頂へと向かいます。急峻な岩場に架かる鎖場をロープ一本で登る様子・・・。毎年、新聞やテレビでおなじみかと思います。こうして開幕したお山開きは、7月10日、山頂から成就社へ御神像がご下行(げこう)になり、翌11日には里宮に御還りになって終了します。

そんな行程のなかで、近年特に賑わいを見せるのが7月10日の成就社境内です。午後2時30分、山頂から成就社境内にご下行になった御神像を背負った人や御神像にお供する人々が、一時間以上に亘り、境内狭しとばかり感謝と喜びに溢れたお練り(パフォーマンス)を繰り広げます。

 

また、これに合わせ我が法人も例年「神迎え」イベントを催行しています。午後1時より成就社の見返(みかえり)遥拝殿に於いて、日本民謡や南米民謡、また和太鼓のプロのユニットに来山いただいて、音楽ライブを実施。やがて境内での御神像ご到着のお練りに和太鼓や笛の音も重なり、雰囲気も最高潮のなか、御神像は勇壮に成就社本殿へとお入りになります。

・・・静かになった境内を少し離れて付近の森に入ってみました。するとそこには樹齢数百年の杉や桧、ブナの大木が、イブキザサのなかから深山の空を仰いでいました。木々は間違いなく数百年この場所に立ち、お山開きはもちろん、ここに集まる人々や時の流れを見続けて来たわけです。

江戸時代中期頃から盛んになったといわれる石鎚詣で。人は、今も変わらずそれぞれの思いを胸に西日本最高峰を目指しています。・・・そこには、何があり、人々は何を求めてその頂へと汗を流すのでしょう。

「山に入って出る行為」は、「生まれ変わる行為」との学説もあり、実際に石鎚山から下山した方にお話を伺うと「生まれ変わった気がします!」とのお答えを聞いたことも何度かあります。大自然の息吹は、人を素直に、本来の素敵な「人のいのち」を輝かせてくれるような気がします。

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